2/2ページ目 その頃、加藤は事故が起きた工場に向かって車を飛ばしていた。 「日曜日だしこんなに早けりゃ道すいてるだろうから、後1時間もかからんだろうな」 固い表情でそう呟きながらアクセルを踏み込む。 対向車も少なく、快適なドライブが続く。 県境を越えて桜木県に入ろうというところで、バス停が見えてきた。 そこのベンチに見覚えのある娘が一人ぽつんと座っていた。 加藤は思わず車を停めた。 「先日オフ会でお見受けしましたが……」 そう言いながら胸の大きく開いたストライプスーツに見とれてしまう。 「あ、あの時は確か黒のトレンチコート着てましたよね」 きっちりとボタンを上まで留めたスーツに、ちらりと視線を流す。 「ちょっと急いでるんですが、もしよかったら、途中まででも乗っていきませんか?」 「迷惑じゃなかったら、お願いします。始発バスまでまだしばらく時間があるので、困ってたので……」 「じゃ、どうぞご遠慮なく。行き先はどちらですか?」 スリットからちらちらと覗く太腿から目を離すことができない。 「桜庭市です」 加藤の目がきらりと鋭い光を放った。 まさかこの娘もスポーツサプリメント製造工場を目指してたりして……大方、神園里緒奈の指示で動いてるのだろう? 加藤は助手席に乗るように勧めたが、チェリーフラワーは後部座席に乗り込む。 しばらく車を走らせているうちに、後ろから声が聞こえなくなったことに気付き、加藤は不安になってバックミラーを覗き込む。 娘が映っていない! だが、早朝起床で睡魔にやられてしまったのだろうと思い過ごす。 そのまま走っているうちに、車内は冷気に包まれた。 妙な胸騒ぎを覚える。 信号待ちで後部座席を振り返ると、娘の姿はなかった! 「ひえー!」 加藤は恐怖の悲鳴を洩らした。 がたがた震えながら車を発進させると、いきなり後ろから首を絞められた。 必死に抵抗しようとしても、この世のものとは思えない力の前には成す術もなく、喉に長い爪がぐいぐいと食い込んでくる。 薄れ行く意識の中で、次第に視界がぼやけ始める。 加藤がこの世で最後に見たものは、バックミラーに映る血の気のない女の顔だった。 真っ赤な口元ににやにやと笑みを浮かべていた。 車はそのまま走り続け、赤信号で停車中の前の車に追突、瞬く間に炎と煙に包まれた。 交差点上空では、人の形をした黒い影の群れがうごめいていた。 「ぎゃー」 「た、助けてくれー」 群れを成して飛来したカラスは、必死の形相で逃げ惑う通行人の頭をつつき、目をえぐる。 血を流しながら人間たちはバタバタと道に倒れていく。 カラスたちは、視神経が垂れ血が滴る目玉をむさぼる。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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