松永行



松永行(まつながあきら 1914年9月21日生)
 [サッカー選手]


 静岡県出身。フォワードを務め、100メートルを10秒8台で走る俊足であったという。東京高等師範学校時代、1936年のベルリンオリンピックに臨む日本代表選手に選出。1936年8月4日、ベルリンのヘルタープラッツ・スタジアムにおいて開催された本選第1回戦のスウェーデン戦で、後半40分に相手ゴールキーパーの股下を抜く逆転ゴールを決め、のちに「ベルリンの奇跡」と謳われる歴史的快挙の立役者となった。

 当時のスウェーデンはドイツ・イタリアと並ぶ優勝候補のひとつであった。これに対して、日本はオリンピックのサッカー競技には初参加であり、体格の面でも明らかに劣っていた。このため、下馬評ではスウェーデンが圧倒的有利とされ、日本からの報道陣さえ全くこの試合を取材していなかった。観客も「万雷のやうな拍手が巻き起こり、たくましいスウェーデン選手を迎えた」のに対し、日本代表には「殆ど注目されなかった」状態であった。強風が吹き荒れていた為、コイントスで勝った日本は前半風上側をとったが、試合はスウェーデンペースとなり、さらに前半15分右フルバック堀江忠男が右腕を骨折するアクシデントに見舞われた。当時公式戦では選手交代が認められていなかった為、堀江はプレーを続けたが、再三堀江がいる日本の右サイドを破られた。前半24分と前半37分にエリク・ペーションが決めて優勢に試合を進めた。さらに体格を活かした「まるで女郎グモのアミのよう」な密着マークによる守備でショートパス戦法を封じ込まれ、日本は為す術もなくそのまま0-2で前半を終えた。

 後半は風下側の為、更に厳しい戦いになると予想されたが、スウェーデンが油断したこともあってか、ショートパスを中心とする日本の戦術が機能しはじめた。後半4分に左ウイング加茂正五からのクロスを「シュートの名人」と呼ばれたセンターフォワード川本泰三がゴールし反撃の口火を切った。川本は相手フルバックの視野から外れる動きいわゆる「消える動き」の上手い頭脳派センターフォワードだった。後半17分、加茂正五からのボールを川本がそらし、右インサイドキックで、ゲームメイクを担ったオールラウンダー・右近徳太郎がゴールを挙げ、同点に追いついた。誰も予想だにしなかった試合展開と優勝候補スウェーデンとの対戦を避けたい心理(スウェーデンが勝ち進めば準決勝でドイツと対戦)により、ドイツ人観客の応援が日本寄りとなった。スウェーデンが何度も攻め込むが、ゴールキーパー佐野理平がことごとく防いだ。後半40分に日本陣内からのクリアが右近に渡り、右近から川本へ。川本が相手フルバックをかわし、右へドリブルして相手を引き付け、中央のやや左寄りのスペースに縦パスを送り込む。すると俊足右ウイング松永行がこのスペースに飛び込んだ。ペナルティーエリアに進入してから松永のドリブルは左に流れ、シュートを打つには角度が無かったが、ゴールキーパーのスヴェン・ベルクヴィストと1対1になった。ここで体勢を崩した松永がミスキックし、シュートはベルクヴィストの正面に転がっていったが、意表を突かれた格好になったベルクヴィストの股を抜き、ゴール。ついに日本が逆転した。残り5分はスウェーデンの猛攻が続いたが、スウェーデンのシュートがバーに当たる幸運もあり、耐えしのぎ、そのままタイムアップ。3対2のスコアで試合終了となった。

 試合終了の瞬間、興奮した6000人のドイツ観客の多くがピッチになだれ込み、日本の勝利を祝福した。同点に追いついてからの一進一退の攻防のなか、「いまにも体がバラバラになりそうだ。もう駄目だ、ぶっ倒れる」と思うほど、日本選手達は体力の限界に近付いていたという。そんな状態での逆転劇だった。日本の勝利は、運動量を生かした粘り強い守備とショートパスによるカウンターという日本独特のスタイルを生かしたものだった。ドイツを始めヨーロッパ各地の新聞は「不可能な事が起きた」「こんなことをだれが想像できたろうか」「美しく正々堂々とした戦いだった。日本の戦いぶりが歓喜を呼んだのだ」と称賛した。

 松永はオリンピック後に起こった太平洋戦争のため1937年、陸軍に従軍して静岡の連隊に配属された。その際に松永は「戦争には行きたくない。もう一度ドイツに行って蹴球(サッカー)を学び、指導者になりたい」と妹に語ったという。中隊長を務め戦地でも部下にサッカーを教えていたが、ガダルカナル島で戦死したとされている。

 1942年?月?日死去(享年28)


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