デッド（Dead 本名：ペル・イングヴェ・オリーン 1969年1月16日生）［スウェーデン・ヘヴィメタルミュージシャン］
スウェーデンの首都ストックホルム出身。子供のころには、睡眠時無呼吸症候群に苦しめられた。10歳の時には、脾臓が破裂し内出血で苦しめられたこともある。後にオリーンが語ったことによると、アイススケートの事故だったという（オリーンは学校でいじめにあっており、いじめによる殴打が原因との説あり）。病院に担ぎ込まれ、一時、臨床死の状態となった。この臨死体験の後、オリーンは死や死ぬことに魅了されていったという。
1986年に、ブラック/スラッシュ/デスメタルバンド、「モービッド」を結成。このバンド活動からデッド（Dead）というステージネームを使い始めた。モービッドでは『December Moon』というデモテープに参加したが、短期間でバンドをやめることを決め、隣国ノルウェーのブラックメタルバンド、『メイヘム』のメンバーと連絡を取った。メイヘムの当時のベーシスト、ネクロブッチャーによるとデッドは最初、デモテープと手紙、磔にされた鼠を小包に入れて送ってきたという。デッドはノルウェーに移住し、1988年初めにメイヘムに加入した。
ライヴでは、デッドは彼の望んだイメージや雰囲気を成すために手段を選ばなかった。彼のキャリアの初めから、彼は顔を白と黒に塗ってしまうコープス・ペイントを行うことで知られていた。それは、カッコよく見せるためではなく、実際に死者に見えるようにするためであった。ショーの前には、ステージ衣装が腐敗し始め、“墓”の香りを得ることが出来るようにと、それらを土に埋めていた。そればかりか、デッドは一度、メンバーに自分自身を土に埋めるように頼んだことがあったという。また、メイヘムのツアー中、烏の死骸を見つけ、それをプラスチックバッグに採集した。デッドはしばしばそれをステージに行く前に、“鼻孔に死臭を伴って”歌うためにその鳥の臭いを嗅いでいた。
やがて、デッドの社会での情勢と彼の死への魅了は、彼の精神状態を大幅に悪化させていった。彼は、ステージ上でしばしば、ナイフや割れた瓶で自傷行為を行おうとするまでになった。しかし、ステージ以外でも、友人といても自傷行為を行おうとするようになり、彼らはデッドを抑止し、鎮めようとしなければならなかった。友人の多くはデッドを心配したが、メイヘムの中心人物・ユーロニモスはデッドの自殺傾向に魅了され、しばしばデッドに自殺を勧めていたという。ユーロニモスが純粋な悪からそうしたのか、それともただ弄んでいたのかは不明である。1991年には、デッドとユーロニモスは、ノルウェーのKrokstad近郊の森に住んでおり、そこはバンドのリハーサルにも使われる場所だった。
1991年4月8日、デッドが家に一人で残っていた間に、彼はナイフで手首と首を切り裂き、それから頭をショットガンで撃ち抜き、自殺を遂げた。彼は短い遺書を残しており、それには室内で銃を使うことへの謝罪が書かれており、“Excuse all the blood”と〆られていた。遺体はユーロニモスによって発見された。ドアに鍵が掛かっており、家の鍵が無かったため、彼は開いている窓に登って家に入った。彼はデッドの遺体を見つけると警察に通報する前にまずカメラを買ってきてデッドの死体の写真を撮影した。この事件に関して、ユーロニモスが「デッドの飛び散った脳をスープ混ぜて食べた」、「デッドの頭蓋骨の破片をネックレスにし、親しい友人達に配った」という話がある。ユーロニモスが実際にこのような行動をとったかは不明だが、「自分のバンドをよりミステリアスに見せるため」の話題作りのため、彼はあえて否定しなかった。
ユーロニモスは写真を現像した後、彼のレコードショップ、ヘルヴェテで封筒に入れて、それらを保管していた。そして、それは、1995年にリリースされた、メイヘムのブートレグライヴアルバム、『Dawn of the Black Hearts』のディスクジャケットに用いられた。この自殺は、ユーロニモスと彼の友人たちの間の亀裂の原因となった。彼らは、自殺前のデッドに向かってのユーロニモスの態度にうんざりしていた。ネクロブッチャーは、ユーロニモスとの友人関係を断絶するほどだった。ユーロニモスはデッドに自殺するチャンスを与えるために、故意にデッド一人を家に残すようにしたのではないかと推測する者もいる。
デッドは生まれ故郷のストックホルムに埋葬された。活動期間も短い上に、スタジオ・アルバムに参加したことは無く、ライヴ・アルバムやデモテープなどにしか音源は残っていない。
1991年4月8日死去(享年22)
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